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10月11日(木) うどんにトッピングがまる天
地下鉄の呉服町駅から地上に上がると、博多駅に向かって左手に、数年前までスーパーの寿屋があった。この建物は、天神に移転した大丸デパートだった時代もあるが、今ちょうど白いカバーで被われて、取り壊し工事中だ。
この建物の裏手に、博多うどんのお店「みやけうどん」がある。店構えをみると、何とも昭和の風情がいっぱいだ。入り口の提灯、引き戸、その横にはいまや懐かしいタバコの販売所がある。ちっちゃい頃、親父からチェリー買って来いと、おつかいに行かされたことを思い出すな〜。
店内も、またいい感じですな。厨房の中心に大きな釜が熱そうに湯気をあげている。一枚板のテーブルも味がある。そして、うどんも安い!
早速うどんに、トッピングでまる天の注文をした。
例の大きな釜でうどん麺をゆがくのだが、同じ釜に一升徳利もふちに引っ掛けて浸っている。この徳利の中に、つゆが入っているのだ。
うどんが作られている間、カウンターの上に飾られている古い写真に目が止まった。何だろう〜。飾り山の前にかき手がずらりと並んでいる。日付がある、昭和12年だ。戦前最後山笠の時に当番した時とのこと。
なる程、飾り山をよく見ると戦闘機や魚雷などいさましい。また、こういう飾りつけがないと、お祭り自体も認められない時代であった、と大将が話してくれた。
そうこうするうちに、うどん完成。いただきます。
テーブル上のどんぶりに盛っているネギを、ぱらっと入れ、うどんをがぶっといく。もちっとした独特のやわ太めんだ。
カツオやこんぶの利いた、淡く澄んだつゆをすすり、ふぅふぅ言いながらまたうどんを食べる。味がまたこれ懐かしい美味さ。
昭和29年の創業以来、様々な人がここを訪れ、うどんに舌鼓うったことだろう。その中でも、福岡出身の作家五木寛之は、エッセイにこの店のことを取り上げているので、話を聞いてみた。
「五木先生は何度かお目にかかりました。ご自身はマントをはおり、2人の人を連れて、この近くにあった大博劇場で芝居見物の帰りみたいでした。」
氏のエッセイで博多うどんのところを読んだが、郷土愛溢れ、何とも微笑ましい。その内容をかいつまんで紹介すると―
昭和45年頃の話なのだが、東京からの客人を何が何でも福岡ファンにしたいという地元意識がもたげ、夜は那珂川べりの夜店に、昼は博多うどんを食べに引っ張りだした。
当時の大丸デパートの裏手には、すでに映画館に転向しているが、歌舞伎座にどこか似た風格とスケールがある古い劇場があった。そのそばで大きな提灯を目印に、めざすうどん屋がある。
ここは何より、うどんが小銭で食べれる気軽さも楽しい。編集者が「こっちのうどんは旨いですな」と言われ、「ええ、うまいでしょう」と少し胸を張って帰路についた。
―要約したが、ニュアンスが違ってたらごめんなさい。
ここの店内は、時代が止まったような雰囲気が漂う。
向こうのテーブルでは、五木寛之がいなりをつまみながら、連れて来た人がうまそうにうどんを食べているのを、ニヤニヤして見ている、何んて気がした。
(参考) 五木寛之著 「ゴキブリの歌」(角川文庫)
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みやけうどんを出て、大博劇場のあったところを見ると、クレーンでマンションの建設工事中だった。五木氏が、飯塚の嘉穂劇場と並んで一見の価値がある建物と称したが、それから幾度か立ち代り、往時を偲ぶものはない。 |
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