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豪速球を見たい!
 ウェスタンリーグの公式戦は、福岡では東区の“雁の巣球場”で開催される。
この球場の位置だが、福岡の人気ドライブコースである海の中道の近くで、都心部からは、かなり離れている。
そのせいか通常のウェスタンの試合は、観客も指で数える程度なのだが、4月5日のこの日は違った。
高校生最速記録を持つ、寺原隼人投手の公式戦初登板だったのである。


 豪速球を見てみたい。
キャッチャーミットがズバンと音を立て、相手の4番打者のバットが空を切る・・・。
そんなたくましいエースの勇姿を、このかたお目にかかってないのだ。


 そんな熱いファンの思いが、雁の巣球場へ最多となる5,000に及ぶ人が駆けつけることとなった。
お目当ては、もちろん寺原の速球。おかげで周辺道路も寺原渋滞だ。

 
 ところで豪速球ピッチャーを挙げるとすれば、誰を思い浮かぶだろう。
まず日本最速記録(158?)と言われる伊良部かな。
続いて挙げる投手としては、古くは江夏に山口高志、そして与田や津田、最近では松坂など。
野茂も速かったなぁ。


 この前オリックス戦をテレビで見ていたら、中継ぎで背番号「14」山口(和男)投手が出てきた。これがコンスタントに150km台のスピードを出すのだ。
背番号「14」山口投手と言えば、山口高志(阪急ブレーブス)じゃん、と軽い興奮を覚えて見ていた。
山口高志は、球がものすごく速かった。
なにせ、右腕の星飛雄馬と日本シリーズで投げ合い、2人とも“スピード違反”と観客にヤジられていたぐらいだ。


雁の巣球場はぎっしり
 しかしいつの間にかホークスも、寺原以外に150km前後のスピードを有する投手が増えたものだ。
寺原の同期の杉内に、一昨年のドラフト1・2位の山村・山田。
他にも斉藤和巳や小椋、木村といった速球派がいる。
彼らが額面どおりに活躍してくれれば、投手王国で日本一は間違いなし。


 雁の巣球場は、グラウンドと客席が非常に近い。
ファンの声援も選手に届きやすいだろう。
また春休みで、色紙やグローブを持った子供も多い。
土埃が出ないように水を撒いて、グランドを整備する光景すらも妙に懐かしい。
たまにだから、お日様の下の野球観戦もいいと思うのかな。
のびやかないい日和だ。

 そう言えば福岡ドームができて、屋外の球場で野球みるのは久しぶりだ。
近鉄戦を見に、ナゴヤ・パロマ球場に行った以来だから、もう大分前になる。

 かって市の中心部にあった平和台球場のころは、よく弁当食べに行ってた。
2軍の試合は、タイコやラッパなどの音モノの応援もなく静かだったし。
まぁその弁当のついでに試合を眺めるという、不真面目なファンだったが。


 しかし選手への親近感といい、純粋に野球観戦できる環境、しかも無料(タダ)!
改めてウェスタンリーグにハマりそうだ。


 さてブルペンに、お目当ての寺原いないかなとのぞきに行くと、先発永井が投球練習していた。
お前も早く1軍で活躍してくれよ。


 ブルペン近くでは、おっちゃん達の野球談義に花が咲いている。
    『永井の球が走ってない、1軍はまだまだだな。』
    『井口の時が、まぁだ観客が多かった。』
    『荒金は2軍じゃもったいない。荒金を見にワシは来た。』
など好き勝手に言ってたが、こういう開放的で、見知らぬ人とも気軽に話せる環境がまたいい。


寺原がブルペン登場すると、この有様
 ブルペンで誰か投げている音がすると、すわ寺原かと、近くにいる者が一斉に注目する。
投げ込みをしているのが日笠投手と判ると、みんな試合の方に視線が移る。
可哀相な日笠投手・・・。


 今度は岡本と篠原が尾花コーチに見守られながら、投げ込みを始めた。
ブルペンがのぞける窓の近くにいたのだが、どんどん後から来たオヤジ達が靴や体を寄せてきて、狭苦しい。
体勢的に窮屈で疲れるのだが、この場を空けるとブルペンの寺原はもう見れない予感がする。
塹壕(ざんごう)の兵士の心境で、この地を死守しなければ・・・。


 一方試合は、先発永井と近鉄高木の投手戦の様相を呈している。
おっちゃんのコメントに反し、永井の好投だ。
しかし何回、永井に投げさせるのだろう。
こちらは無理な体勢で足が痺れてきた。

 
 4回裏になり、やっと寺原がブルペンに登場した。
歓声が起こり、その声で周りが一段と詰めて寄って来て、ブルペンをのぞく窓に視線が集中する。
バズーカ砲みたいな一眼レフを構えた人もいる。


 ブルペンから、軽めの肩慣らしの後、やがて“ビシッ”とキャッチャーミットの音が響く。
やはりウワサに違わぬ速さだ。
バッターボックスに立ったら恐いだろうなぁ。


 寺原が投げるつど、周りの人の顔や頭が近づいて来る。
人生で、こんなに知らないオヤジの顔が近づいた体験は記憶に無い。
ふと気づくと肩には、後ろのオヤジのバズーカーがのっかっている。
おいおい三脚の代わりかよ。
何球か投げ込みを見届けて、たまらずブルペンの近くから離れた。

 そして今度は内野バックネット裏の人垣の肩越しに、寺原の登場を待つ。
7回の表、ついにピッチャー交代のアナウンスがされ、拍手と共に寺原がピッチングマウンドに登った。
鳴り物がないと、まるでメジャーみたいな雰囲気がする。


 投球練習の後、近鉄のバッターがバッターボックスに立った。
周りのゴクリと生ツバを飲み込む音が聞こえる。


 寺原はおもむろにふりかぶり、第一球を明日に向かって投げた。
 
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